人狼ゲームで社会人力を鍛えよ 〜人狼の意外なる本質〜
人狼。。
人狼ゲームとは。
騙し合いのゲーム。。
心理戦。。
…
…
…
と、言われている。
一般に、そう言われている。
しかし、果たして本当にそうなのだろうか。。。
概要
人狼とは
人狼ゲームとは、村人のうちに一定少数紛れ込んだ人狼が誰なのかを話し合いで探るアナログゲームである。村人チームは紛れ込んだ人狼を全員探り出し処刑することを目的とし、人狼は処刑されずに生存することを目的とする。
私は中高の宿泊行事のときに魅了されてからと言うもの、大学ではサークルにも入り大層熱中した。
一般論
一般的には、誰が人狼かわからない疑心暗鬼な状況で騙しあうバトルだ…と思われている。
しかし私から言わせればこの認識は不十分と言わざるを得ない。
本論
3つに大別
実は、人狼ゲームは主要なソフトスキルが究極的に総動員されるゲームなのである。
必要な能力は大きく3つに分解されると私は考える。
- ①自分が真実を理解する能力
- ②仲間に真実を理解させる能力
- ③敵に虚偽の事実を理解させる能力
主に①と②は 村人チームに、③は人狼チームになった時に必要になる。
以下、順に語っていく。
①自分が真実を理解する
多数決で追放する人物を決めるにあたって、人狼が誰であるかをまず自分が見抜くのが重要である。
これは a情報収集→b示唆獲得→c統合推理 のようなフローを辿る。
a.情報収集
まず情報収集能力が問われる。その情報のソースには、I.役職能力によって明らかにされた事実と、II.他者の言動の二つがある。
I.役職能力によって得られる事実
村人チームには特殊能力を持った「役職」が設けられる。
最重要な役職である占い師は、一ターンに一人を選んで人狼か否かを診断する能力を持っている。
その能力で得られる「〇〇は人狼でない/ある」という情報は正確性100%の真実として提供されるため、どの人物を占い対象として選択するかは勝敗に大きく影響する。
対象の選択は「この人物が人狼だろう」という論拠が一般的だが
「この人物は優秀で敵だと怖い」
、さらに
「AとBが味方で、AとCは敵に思われるため、Aを占うとA,B,Cの3人の情報が得られる」
など考え方は無限大である。
検証したい仮説の深さが重要であると言える。
II.他者の言動
言動には言語情報と非言語情報がある。
- 言語情報の聴解力
他者が発言した事実や意見に加え、言葉尻(終助詞)や副助詞のチョイス等からも情報が得られる。
- 非言語情報の観察力
また非言語情報としてリアクション等、示唆を獲得し得る言動は無数にある。メタ的に周囲の状況に気を配ることができると良い。
そうした、聴解力やメタ的観察力が有用となる。
- 質問力
加えて、他者の言動の情報源としての特殊性は、自分の質問次第でいくらでも議論の中で引き出せるという点である。
短い議論時間の制限がある中、クリティカルな質問をできる能力は非常に重要だ。
役職の能力は、正確性は100%である一方、試行回数は1ターンに1回きりである上、(例えば占い師なら)「〇〇は人狼であるか否か」ということしか検証できない。
YesNoクエスチョンしかできないのだ。
一方で単なる質問であれば、嘘をつかれる可能性があるため正確性は保証されないものの、質問形態が制限されていない。
5W1Hを駆使したオープンクエスチョンが無制限に可能なのだ。(ルールやマナーに反しない限度で)
その意味では役職由来で情報を得るのと同等以上の価値を持ち得る。
「正確性」に強みのある役職能力由来の情報と、「自由度」に強みのある他者の言動由来の情報を総合的に収集するのが非常に良いだろう。
b.示唆獲得
次に、そうして収集した情報からどのような示唆を見出すかで能力が問われる。
c.統合推理
最後の、獲得した示唆を統合して推理をまとめるフェーズでは、その統合・推理能力が問われる。その如何で推論の過程やその結論は大きく変わり得る。
b、cを説明する例として、
A(占い師)が「私は占い師だ。Xは人狼ではない。」と主張し、B(人狼)は「私こそが占い師だ。Yは人狼ではない。」と主張した場面を想定する。
実際には占い師は一人しかいない設定なので、片方の占い師は人狼側が詐称しているのは明白だ。
ただその事実から見出せる示唆及び結論は複数考えられる。
例えば
「偽占い師(人狼B)は仲間を庇ってもう一人の人狼を人狼でないと言ったのでは。故にYも人狼だろう。」
と推論できる一方
「人狼が仲間をいきなり庇いにいく姿勢は、先述の推論により即座に怪しまれてしまうとBは知っていたのでは。さらに、村人であるYを人狼ではないと言うことでYの信用を得る戦略なのでは。故にYは人狼ではないだろう。」
との推論も可能だ。どちらのシナリオも合理的だ。同じ情報からでも引き出す示唆・結論は各プレイヤーで個性が出るのだ。
②仲間に真実を理解させる
仮に自分が真実を知っていたとしてもそれを仲間に理解してもらわないことには、多数決で人狼を処刑することができない。故に説得力が求められる。
人を説得するにはどうすれば良いのだろうか。
何をもって人は人の言うことを信頼するのだろうか。
信頼は、発言内容自体の信頼と、人自体の信頼の二つに分けられると考えられる。
発言自体への信頼
発言を信頼してもらうには、発言の中身が信頼に足る内容である必要がある。
論理性
信頼に足る内容とは、正確性が高そうなものだ。
①で話したような思考過程を正確に踏んできたことが窺える論理性を持った発言を心がけたい。
説明力
加えて、仮に発言の裏にある思考が極めて論理的だとしても、それを伝わるように話さなくては意味をなさない。
尤もらしいことを、わかりやすく説明するトーク力・説明力が求められる。
人への信頼
発言の正確性と同等に信頼を決定するものが、人への信頼である。
「この人は信頼できる人だから、言うこと聞こう」と思うのは人の常である。
「何を言うかより誰が言うかだ」という事態が起こるのは人狼ゲームでも例外ではない。
特に人狼ゲームで信頼できる人というのは、味方(村人チームにとっての村人チーム)ということである。味方とは基本利害関係が一致しているので信頼し合うものだ。
故に、味方(村人チーム)からの信頼を勝ち取るためには、村人チームに利益を与える言動をすることが効果的である。
そのため積極的な貢献が求められる。
ただその一方で、発言が過多で主張が強すぎると、議論を人狼有利にコントロールしたい人狼だと疑われてしまう恐れもある。
あくまで他人の主張を聞く余裕を持ちつつ全体感のある貢献が良いようだ。
ビジネススキルそのもの
論理性のある内容を理解しやすく説明し、人物として信頼されることで、自分に有利な意思決定を他者にしてもらうのだ。
まるでセールスであり交渉でありプレゼンであり、
もはやビジネススキルそのものである。
③敵に虚偽の事実を理解させる
これは人狼チームになった時に人狼の生存のため村人チームを欺くために必要となる。このプロセスは非常にハラハラする場面だが、求めれられるのは嘘をつく演技力だけではない。
大別すると、演技力・説得力・シナリオ構築力の三つになる。
演技力
演技力とは自分の嘘を通すように振る舞う能力であることは良いだろう。
説得力
そして説得力は②でも話した、ビジネススキルのような能力のことである。
シナリオ構築力
残りのシナリオ構築力だが、ここでは最重要となる。ここで構築するシナリオとは嘘の内容である。自分が人狼ではなく他の誰かが人狼であることを尤もらしく見せるシナリオである必要がある。
そのためには正しい情報把握が必要である。なぜなら、事実と矛盾する発言をしたら、嘘がばれたり信頼感を損なったりと危険だからだ。
村人チームにも求められる情報把握能力・そこから自分に有利な示唆を見出す能力を兼ね備え、その上でそれに適合したシナリオを構築する能力も必要なのだ。
終わりに
以上、人狼ゲームの意外なる本質を語った。
誰が嘘をついているのかわからないドキドキ感があるのはもとより、推理し仲間を巻き込んで真相を突き止めていく楽しさは何物にも替えがたい。
そしてそれだけでなく、そうして楽しく遊ぶなかで、以上語ってきたような極めて重要なソフトスキルを大きく鍛錬できる。
そんな最強のゲームなのである。
P.S
ぶっちゃけ、全然語り足りていない。
今回は、要求されるソフトスキルを構造化して書いてみた。
しかしかなり省略し、簡単に書いた。文量を減らし、理解難易度を下げた。
というのも、人狼ゲームをあまり知らない人達にもせめて人狼ゲームの本質だけでも伝えたい。
そういう思いから執筆したためだ。
人狼ゲームをよく知る人にも新しい視点を提供したいという気持ちもありつつも今回は対象として初心者を優先させてもらった。
タイトルをつけるにあたっても、人狼ゲームにあまり興味がない層に訴求するためにあえて「社会人力」ということばを使った。
その意識をしないのであれば単純に「人狼の意外なる本質」にすればよかった。
あるいは「ソフトスキル」にしても良いし「人間力」にしてもよかった。
また、もしさらに人狼ゲームに興味のない層への訴求力を高めるために「就活力」という言葉を使ったら良いかもとは思ったが、あまりにもソフトスキルという本質から逸れると感じたため、間をとって「社会人力」とさせてもらった。
さてさて。まあ今回そのように大衆に受け入れられる範囲を念頭に置きながら執筆したわけだが、
それぞれのソフトスキルが使用される場面やその際の戦略、その思考過程などなどを上級者目線を含めてさらに語り尽くす場があったらなと思う。
という続編フラグ
(終)